九月と七月の姉妹
9.5 fri
A film by Ariane LABED, Mia THARIA, Pascale KANN, Rakhee THAKRAR
FESTIVAL DE CANNES 2024 OFFICIAL SELECTION UN CERTAIN REGARD

Introduction

第77回(2024)カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 正式出品

“ギリシャの奇妙な波”を継ぐ、
新鋭アリアン・ラベドの鮮烈な長編デビュー作
15歳の姉妹のいびつな絆を映し出す、終わらない悪夢

2024年、カンヌ国際映画祭でのプレミア上映以降も各国映画祭で賞賛を集める本作は、フランス人俳優として世界的に活躍するアリアン・ラベドがメガホンをとった長編デビュー作。史上最年少のマン・ブッカー賞候補となった作家デイジー・ジョンソンによる「九月と七月の姉妹」(原題:Sisters)に着想を得て制作され、ラベドの公私に渡るパートナーであるヨルゴス・ランティモスを中心として生まれた映画ムーブメント<ギリシャの奇妙な波 (Greek Weird Wave) >を継ぐ作風で脚光を浴びた。10ヶ月違いで生まれた一心同体の姉妹・セプテンバーとジュライを演じたのは“カンヌの新星”として演技を高く評価されたパスカル・カンとミア・サリア。また、『関心領域』でアカデミー賞音響賞に輝いたジョニー・バーンによるサウンドデザインが物語を不穏な予兆で充たしていく。一体どこからどこまでが自分なのか —— 互いの境目がわからないほど絡み合った姉妹の絆は、やがて醒めることのない悪夢へと姿を変える。

Story

セプテンバーはゲームをする。
彼女のいうことはなんでも聞かなくてはいけない。
命令どおりにできなかったら、
わたしは命を一つなくしてしまう。

生まれたのはわずか10か月違い、一心同体のセプテンバーとジュライ。我の強い姉は妹を支配し、内気な妹はそれを受け入れ、互いのほかに誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、二人が通うオックスフォードの学校でのいじめをきっかけに、姉妹はシングルマザーのシーラと共にアイルランドの海辺近くにある長年放置された一族の家<セトルハウス>へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、セプテンバーとの関係が不可解なかたちで変化していることに気づきはじめるジュライ。「セプテンバーは言う──」ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく……。

Trailer

  • Long ver.

  • Short ver.

  • カンヌに現れた二人の新星

    Vogue

  • “恐怖は家の中から始まる”そんな不穏さに満ちている

    Sight & Sound

  • ゴシック風のおとぎ話とホラーの二つの顔を併せ持つ

    Little White Lies

Playlist

Director

アリアン・ラベド

アリアン・ラベド Ariane Labed

1984年、フランス人の両親のもとに生まれ、幼少期をギリシャ・アテネで過ごす。ドイツを経て、12歳でフランスに移住。エクス=マルセイユ大学で演劇を学び、演出家アルギロ・キオティと出会い、2005年に劇団VASISTASを共同設立。ギリシャ国立劇場でも舞台に立った。2010年、ヨルゴス・ランティモス監督が製作・出演した『アッテンバーグ』(アティナ・ラヒル・ツァンガリ監督)で映画デビューを果たし、ヴェネツィア映画祭とアンジェ・プルミエ・プラン映画祭の最優秀女優賞を受賞。本作でヨルゴス・ランティモスと出会い、2013年に結婚。2011年から2021年までロンドンに在住し、現在はアテネを拠点にしている。2014年、『欲望の航路』でロカルノ映画祭最優秀女優賞を受賞、2015年にはセザール賞新人女優賞にもノミネートされた。初監督短編『Olla』(19)はカンヌ監督週間、ロンドン映画祭、テルライド、サンダンスなど、世界中の映画祭で上映され、クレルモン=フェランでは最優秀作品賞を受賞している。

Based on the novel “Sisters”

デイジー・ジョンソン『九月と七月の姉妹』

原作

デイジー・ジョンソン『九月と七月の姉妹』

(東京創元社刊/市田泉訳)

Cast

ミア・サリア

ミア・サリア Mia Tharia

ジュライ

2005年、イギリス出身。心理学者であるイギリス人の母親と、科学者であるインド人の父親のもとに生まれ、ロンドン南部バラム地区で育つ。2023年、17歳のときにBBC Threeのティーンドラマ『Phoenix Rise』でポリー・シャー役としてデビュー。第2シリーズでもレギュラー出演を続け、第3・第4シリーズではリカーリング(準レギュラー)として登場した。翌年、アリアン・ラベド監督の初長編『September Says』で、主人公ジュライ役として映画デビュー。ブリクストン・ユース・シアターで発掘されたことからキャスティングされた。同年11月には、BBC Oneのスリラー『The Listeners』(ジャニクサ・ブラヴォ監督)にて、レベッカ・ホールと共演し、アシュリー役を演じた。現在は、ニュージーランドでタイカ・ワイティティ監督によるカズオ・イシグロ原作の長編映画『クララとお日さま』を撮影中で、エイミー・アダムス、ジェナ・オルテガと共演している。

パスカル・カン

パスカル・カン Pascale Kann

セプテンバー

2000年、イギリス出身。2018年11月、ロンドンのBFIサウスバンクで開催されたWe The Peoples Film Festivalにて、自身の短編映画『Day by Day』を初上映。2020年には、ロンドンのリリック・ハマースミス劇場で上演された舞台『アンティゴネー』(ロイ・アレクサンダー・ワイス演出)に出演した。映画では、アリアン・ラベド監督の長編デビュー作『September Says』でスクリーンデビューを果たす。

2024年5月21日、第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でワールドプレミア上映され、カンの演技は「恐ろしいほどの献身」と称賛され、「映画祭でもっとも記憶に残る演技のひとつ」と評価された。2025年2月、BBC Oneのディストピアドラマ『The Dream Lands』への主演が発表された。この作品はローザ・ランキン=ジーの小説『Dreamland』を原作とし、カンはチャンス役で主演を務める予定。共演にはコナー・スウィンデルズ、アンナ・フリエル、ゴルダ・ロシューヴェルが名を連ねている。

ラキー・タクラー

ラキー・タクラー Rakhee Thakrar

シーラ

1984年、イングランド・レスターのセントマシューズ地区で育ち、インド系の家系に生まれる。最近ではワーナー・ブラザースの『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』でティモシー・シャラメ、オリヴィア・コールマンらと共演。BBCのテレビドラマ『I, Jack Wright(原題)』ではニキ・アムカ=バード、ジェマ・ジョーンズ、ジョン・シムと共演している。 過去のテレビドラマの出演作は、『Finders Keepers(原題)』(主演)、Netflixのヒット作『セックス・エデュケーション』のサンズ先生役、マキシン・ピーク主演のBBC One『Rules of the Game(原題)』、ITV『刑事カレン・ピリー 再捜査ファイル』、HBO Max / BBC『ガール・ビフォア -私そっくりの女が住んでいた家』、Hulu『フォー・ウェディング ~恋するロンドンライフ~』など。 映画の出演作はアンディ・マクダウェル、ミリアム・マーゴリーズ主演、シャロン・マイモン、タル・グラニット監督の『My Happy Ending(原題)』など。

ニーヴ・モリアーティ Niamh Moriarty

ジェニファー

アイルランド・ダブリン出身。11歳からプロとして活動を始め、シャロン・ホーガン、アリソン・オリヴァー、フィオヌラ・フラナガン、オーウェン・ロー、ジェイミー・ビーミッシュなど、名だたるアイルランドの俳優たちと共演。最近では、アメリカを拠点とする青春映画『Essay #2』で主演を務めることが発表されており、今後の詳細にも注目が集まっている。 ニーヴの初主演作は、BBCのBAFTAノミネート作品『Best Interests』での「マーニー」役。この作品は2023年6月にBBC ONEおよびiPlayerで放送された。ニーヴは脳性まひを抱えており、障害を持つ女優として、世界中のスクリーンに正確な表現を届ける道を切り開くとともに、エンターテインメント業界の基準を変え、誰もがアクセスしやすい創造の場を築くことを目指している。

スージー・ベンバ Suzy Bemba

ダンスのインストラクター

2000年、フランス・マルティーグ出身。幼少期から演劇とクラシックバレエを学び、16歳のときに膝の怪我をきっかけに演技の道へ。高校卒業後は医学を志しつつ、演技のキャリアをスタート。現在は生物学を学びながら俳優業を続けている。ドラマシリーズ『L'Opéra』(21-22)での演技が評価され、2023年にフランスの批評家協会から最優秀助演女優賞を受賞。2024年にベルリン国際映画祭の「European Shooting Stars」に選出、同年にはUnifranceの「10 to Watch」にも選ばれた 。フランスの俳優たちの労働環境改善を目的とし、撮影現場でのハラスメント防止やインティマシー・コーディネーターの導入を推進する団体「L'Association des Acteurices(ADA)」の共同創設者。主な出演作として、『哀れなるものたち』『Homecoming』『Drift』(23)がある。

Sound & Music

ジョニー・バーン Johnnie Burn

イギリス出身。『記憶の棘』(06)、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(14)、『関心領域』とジョナサン・グレイザー監督作の音響を手掛けている。ジョナサン・グレイザー監督との仕事を通じてヨルゴス・ランティモス監督と出会い『ロブスター』(16)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(18)、『女王陛下のお気に入り』(19)、『哀れなるものたち』(24)と同監督の音響も担当。『関心領域』でアカデミー賞音響賞、英国アカデミー賞音響賞、ヨーロッパ映画賞音響賞などを受賞した。その他の担当作品に『アンモナイトの目覚め』(20)、『Nope』(22)などがある。

Theater

地域 劇場名 電話番号 公開日
東京 ホワイトシネクイント 03-6712-7225 2025年9月5日(金)
東京 ヒューマントラストシネマ有楽町 03-6259-8608 2025年9月5日(金)
東京 新宿シネマカリテ 03-3352-5645 2025年9月5日(金)
東京 シネ・リーブル池袋 03-3590-2126 2025年9月5日(金)
東京 キネカ大森 03-3762-6000 2025年9月5日(金)
神奈川 ローソン・ユナイテッドシネマ STYLE-S みなとみらい 0570-783220 2025年9月5日(金)
大阪 テアトル梅田 06-6440-5930 2025年9月5日(金)
京都 アップリンク京都 075-600-7890 2025年9月5日(金)
兵庫 元町映画館 078-366-2636 2025年9月6日(土)
愛知 センチュリーシネマ 052-264-8580 2025年9月5日(金)
福岡 KBCシネマ 092-751-4268 2025年9月5日(金)
北海道 シアターキノ 011-231-9355 2025年10月18日(土)
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 2025年9月19日(金)
千葉 ユナイテッド・シネマ幕張 0570-783-231 2025年9月5日(金)
茨城 シネプレックスつくば 0570-783-122 2025年9月5日(金)
栃木 小山シネマロブレ 050-3196-9000 2025年9月5日(金)
栃木 宇都宮ヒカリ座 028-633-4445 2025年9月19日(金)
群馬 シネマテークたかさき 027-325-1744 2025年10月24日(金)
静岡 静岡シネ・ギャラリー 054-250-0283 2025年10月3日(金)
静岡 シネマイーラ 053-489-5539 2025年10月24日(金)
長野 上田映劇 0268-22-0269 2025年9月19日(金)
石川 ユナイテッド・シネマ金沢 0570-783-071 2025年9月5日(金)
広島 シネマモード 084-923-6800 2025年9月5日(金)
徳島 ufotable CINEMA 088-678-9113 2025年10月24日(金)
熊本 Denkikan 096-352-2121 順次公開
佐賀 シアター・シエマ 0952-27-5116 順次公開
宮崎 宮崎キネマ館 0985-28-1162 2025年10月31日(金)
沖縄 桜坂劇場 098-860-9555 2025年9月5日(金)

Comment

  • 石山蓮華

    電線愛好家・文筆家・俳優

    姉妹のゲームがいつのまにか執着になっていく。
    この不穏なシスターフッドは危ういだけではない普遍性がある。
    大人になるために心の奥底にしまい込んだ女の子たちの名前、
    私たちだけの共通言語と恐怖をもう一度なぞりたくなっている。

  • 榎本マリコ

    画家

    閉鎖的な社会生活との狭間で光り輝く姉妹の命。
    でもその光は希望に満ちたものじゃなく
    支配欲と服従、諦念に満ちていた。

  • かとうさおり

    NINE STORIES主宰

    クローズドな関係性と空間の中で、ある事件をきっかけに、更にぼやけていく2人の姉妹の境界線。時間軸もあやふやとなり、スリリングで不穏な空気感に目が離せなくなる。原作と併せての鑑賞を推奨!

  • SYO

    物書き

    他者の悪意、淀んだ母娘関係、歪な姉妹愛。
    支配的で狂っている。でも、独りではない。
    絶望か希望か――貴方は答えを出せるのか。
    僕は未だ衝撃で心が強張り、動けずにいる。

  • 嶽本野ばら

    作家

    貴方は知るでしょう。自分がすでに傷つき、修復不可能な状態であることを。それでも貴方は痛みと欠損から眼を逸さぬ決意をするのではないでしょうか? 彼女達の宿命に共鳴するから。これは寓話ではなく今を生きなければならない少女、つまり貴方の記録なのだと思います。原作とこの映画が同じ核を持つ双子のような姉妹であるが如くに……。

  • 中村桃子

    画家・イラストレーター

    中村桃子のイラスト
  • 野中モモ

    ライター・翻訳者

    ときに親子以上に密接になる姉妹の結びつき。
    歪で極端な事例に見えるけれど、ありふれた母子家庭サバイバルの話とも言える。
    その危ういバランスを成り立たせる映像と音による語りに個性と技を感じます。
    英国の曇り空、思春期の鬱屈と相性が良すぎ。

  • 福永紋那

    OH! MY BOOKS店主

    ‘怖カワイイ’って感じの姉妹に終始ヒヤヒヤしたんですが、途中お母さんとのうそみたいに明るくてイケてるダンスシーンがあったのがめちゃくちゃ最高で、気づくと彼女たち3人家族の不思議な魅力にかなり夢中になっていました。

  • ブン

    古書店員

    自分の心と身体が少しずつ乖離していて、支配されていくような感覚。暴力的で束縛のある姉妹間の奇妙な結びつき。でも全てが嫌悪や恐怖で溢れているわけではなくて、愛に限りなく近いものもある。それは絆なのか共依存なのか。なんだか、高熱の時に見る夢のような時間を過ごしました。

  • 水野しず

    コンセプトクリエイター、ポップ思想家

    秩序の網にむりや裂け目を作って入り込んでくる侵入者がいたらサスペンスだけど、ある秩序の渦中であたりまえのようにいたりいなくなったりする人間はホラーだ。思春期の少女にとってはこの世の大半がこんなおそろしさに満ちたホラーみたいな側面がある。いろんな人間が自己都合で近すぎる距離に出現したり突如消失したりする。そういうこわさって、どうしたらわかってもらえるんだろうか。

  • 吉澤嘉代子

    シンガーソングライター

    ⽀配的なセプテンバー、服従するジュライ。
    姉妹は⼆⼈だけの合図や⽬配せで会話し、⺟親さえ介⼊させない歪な絆を結んだ。
    彼⼥たちの無垢な表情や、愛らしいファッションとは裏腹に、⽿元で囁かれるような息遣いや、ざらついた効果⾳がスクリーンを不穏に包む。あの⼝笛が⽿にこびりついて離れない。

  • 渡辺祐真

    作家・書評家

    本映画の原作が目指していたのは、叙述トリックと言葉遊び、そして館を舞台にしたゴシックミステリーだった。いずれも小説ならではの技巧の賜物だ。ところが映画では、家具や物音を軸に据えることで、原作がやろうとしていたことを全く違うやり方で達成してしまった。ただの焼き直しではない、優れた映画化とはこのようなものだ。

  • Lina Sun Park

    アーティスト

    日常の儚さや私的な空間、そして彼女たちだけの儀式を、静かで心に残る方法で描き出していたことに深く心を動かされました。