Story
セプテンバーはゲームをする。
彼女のいうことはなんでも聞かなくてはいけない。
命令どおりにできなかったら、
わたしは命を一つなくしてしまう。
命令どおりにできなかったら、
わたしは命を一つなくしてしまう。
生まれたのはわずか10か月違い、一心同体のセプテンバーとジュライ。我の強い姉は妹を支配し、内気な妹はそれを受け入れ、互いのほかに誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、二人が通うオックスフォードの学校でのいじめをきっかけに、姉妹はシングルマザーのシーラと共にアイルランドの海辺近くにある長年放置された一族の家<セトルハウス>へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、セプテンバーとの関係が不可解なかたちで変化していることに気づきはじめるジュライ。「セプテンバーは言う──」ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく……。
石山蓮華
電線愛好家・文筆家・俳優
姉妹のゲームがいつのまにか執着になっていく。
この不穏なシスターフッドは危ういだけではない普遍性がある。
大人になるために心の奥底にしまい込んだ女の子たちの名前、
私たちだけの共通言語と恐怖をもう一度なぞりたくなっている。
榎本マリコ
画家
閉鎖的な社会生活との狭間で光り輝く姉妹の命。
でもその光は希望に満ちたものじゃなく
支配欲と服従、諦念に満ちていた。
かとうさおり
NINE STORIES主宰
クローズドな関係性と空間の中で、ある事件をきっかけに、更にぼやけていく2人の姉妹の境界線。時間軸もあやふやとなり、スリリングで不穏な空気感に目が離せなくなる。原作と併せての鑑賞を推奨!
SYO
物書き
他者の悪意、淀んだ母娘関係、歪な姉妹愛。
支配的で狂っている。でも、独りではない。
絶望か希望か――貴方は答えを出せるのか。
僕は未だ衝撃で心が強張り、動けずにいる。
嶽本野ばら
作家
貴方は知るでしょう。自分がすでに傷つき、修復不可能な状態であることを。それでも貴方は痛みと欠損から眼を逸さぬ決意をするのではないでしょうか? 彼女達の宿命に共鳴するから。これは寓話ではなく今を生きなければならない少女、つまり貴方の記録なのだと思います。原作とこの映画が同じ核を持つ双子のような姉妹であるが如くに……。
中村桃子
画家・イラストレーター
野中モモ
ライター・翻訳者
ときに親子以上に密接になる姉妹の結びつき。
歪で極端な事例に見えるけれど、ありふれた母子家庭サバイバルの話とも言える。
その危ういバランスを成り立たせる映像と音による語りに個性と技を感じます。
英国の曇り空、思春期の鬱屈と相性が良すぎ。
福永紋那
OH! MY BOOKS店主
‘怖カワイイ’って感じの姉妹に終始ヒヤヒヤしたんですが、途中お母さんとのうそみたいに明るくてイケてるダンスシーンがあったのがめちゃくちゃ最高で、気づくと彼女たち3人家族の不思議な魅力にかなり夢中になっていました。
ブン
古書店員
自分の心と身体が少しずつ乖離していて、支配されていくような感覚。暴力的で束縛のある姉妹間の奇妙な結びつき。でも全てが嫌悪や恐怖で溢れているわけではなくて、愛に限りなく近いものもある。それは絆なのか共依存なのか。なんだか、高熱の時に見る夢のような時間を過ごしました。
水野しず
コンセプトクリエイター、ポップ思想家
秩序の網にむりや裂け目を作って入り込んでくる侵入者がいたらサスペンスだけど、ある秩序の渦中であたりまえのようにいたりいなくなったりする人間はホラーだ。思春期の少女にとってはこの世の大半がこんなおそろしさに満ちたホラーみたいな側面がある。いろんな人間が自己都合で近すぎる距離に出現したり突如消失したりする。そういうこわさって、どうしたらわかってもらえるんだろうか。
吉澤嘉代子
シンガーソングライター
⽀配的なセプテンバー、服従するジュライ。
姉妹は⼆⼈だけの合図や⽬配せで会話し、⺟親さえ介⼊させない歪な絆を結んだ。
彼⼥たちの無垢な表情や、愛らしいファッションとは裏腹に、⽿元で囁かれるような息遣いや、ざらついた効果⾳がスクリーンを不穏に包む。あの⼝笛が⽿にこびりついて離れない。
渡辺祐真
作家・書評家
本映画の原作が目指していたのは、叙述トリックと言葉遊び、そして館を舞台にしたゴシックミステリーだった。いずれも小説ならではの技巧の賜物だ。ところが映画では、家具や物音を軸に据えることで、原作がやろうとしていたことを全く違うやり方で達成してしまった。ただの焼き直しではない、優れた映画化とはこのようなものだ。
Lina Sun Park
アーティスト
日常の儚さや私的な空間、そして彼女たちだけの儀式を、静かで心に残る方法で描き出していたことに深く心を動かされました。