エマ・セリグマン Emma Seligman
監督・脚本・製作
1995年、カナダ・トロント出身。ユダヤ系家庭で改革派アシュケナージ系コミュニティで育つが、現在は反シオニズムの立場を取り、Jewish
Voices
for Peaceのメンバーでもある。2021年初頭にロサンゼルスへの移住を経て、ニューヨークを拠点に活動している。
幼い頃から映画評論番組を観て育ち、10代の頃にはブログ「Confessions of
a Teenage Film Buff」(※現在は閉鎖されている)を運営し、ハフィントン・ポストにも映画レビューを寄稿していた。高校時代、トロント国際映画祭の若者プログラム「TIFF Next
Wave」に参加し、毎年ミニ映画祭の運営に携わる。最終学年で一幕劇を演出したことが、監督を志すきっかけになったという。
ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部(NYU Tisch School of the
Arts)で映画を学び、在学中に2本の短編映画『Lonewoods』『Void』を制作し、卒業制作として短編『Shiva
Baby』を完成させた。この短編は2018年にサウス・バイ・サウスウエストでプレミア上映された後、パームスプリングス国際短編映画祭、ウッドストック・フィルムフェスティバル、TIFFネクストウェーブ・フィルムフェスティバルなど数々の映画祭で上映され、現在はVimeoスタッフ・ピックに選ばれている。同時期に複数の制作会社でインターンも経験し、トロント国際映画祭の若者選考委員として作品のプログラミングにも関わった。
大学卒業後もニューヨークに残り、制作会社Animal
Kingdomでインターンを経験。短編『Shiva
Baby』の主演俳優レイチェル・セノットの後押しで本作を長編化、各国映画際や批評家たちから高く評価され自身の代表作となった。2023年には、NYU時代から構想していた長編『ボトムス
~最底で最強?な私たち~』で注目を集め、2024年の『Forbes 30 Under 30』(Hollywood &
Entertainment部門)に選出されている。制作は非常に共同的なプロセスで、俳優と話し合いながら作品を作ることを楽しんでいるという。今後は「より大きな規模でクィアでユダヤ的な物語を作り続けたい」と語っている。
Filmography
- 2017 Lonewoods(Short)
- 2017 Void(Short)
- 2018 Shiva Baby(Short)
- 2020 シヴァ・ベイビー
- 2023 ボトムス ~最底で最強?な私たち~
セリグマン監督が
影響を受けたユダヤ映画
- 『愛のイエントル』(1983) 監督:バーブラ・ストライサンド
- 『僕たちのアナ・バナナ』(2000) 監督:エドワード・ノートン
- 『屋根の上のバイオリン弾き』(1971) 監督:ノーマン・ジュイソン
- 『KiSSing ジェシカ』(2001) 監督:チャールズ・ハーマン=ワームフェルド
- 『恋に落ちたら…』(1988) 監督:ジョーン・ミックリン・シルヴァー
- 『シリアスマン』(2009) 監督:ジョエル&イーサン・コーエン
木津毅
ライター
ソーシャルメディアのアカウントを切り替えるように、いろんな「自分」を使い分けることに慣れた主人公。
彼女がここで(強制的に)向き合うのは、本当はひとりしかいない「自分」。
新世代のエースであるエマ・セリグマンとレイチェル・セノットは、そんな地獄のような状況ですら、知的なクリンジ・コメディに仕上げてしまう。
清田隆之
文筆家/「桃山商事」代表
偽りのつぎはぎで形作られた自己像と、無数の“分人”が混線する〈シヴァ〉という舞台。
ちょっと触れたら倒れてしまうドミノのような、一本抜いたら崩壊してしまうジェンガのような、そんな脆さと緊張感にあふれる72分でした。
児玉美月
映画批評家
自分自身を誇ることができないとき、周囲からの何気ない質問がチクチクするとき、他の誰かになりたくてたまらないとき……
『シヴァ・ベイビー』は身に覚えがありすぎるそんな感情を、密度120%で容赦なくわたしたちの前に差し出す。
コナリミサト
漫画家
恋、欺瞞、ギラギラ性欲、赤ちゃん、死んだ人、グラスワイン、キャリア、進路、ベーグル、あやまち、やきもち、脱ぎ捨てたい過去を脱がせてくれない人達からの圧、お砂糖ダディ、ぶれる自尊心、無敵感と無力感。
死者そっちのけのお葬式鑑賞中に開く記憶の扉、あの日あの頃の焦燥してたあの感じのあの自分を思い出してダニエルと一緒に頭がぐわんぐわんに揺れた。シニカルでポップで瞳、釘付け。
とれたてクラブ
漫画家
ひらりさ
文筆家
まるで「笑ってはいけないお通夜24時」。ダニエルを襲うトラブルの数々は、もはや災害級。けれど、血みどろのゾンビ映画に救われることがあるように、気まずいシヴァにハラハラするうち、ふしぎと心が癒された。愛すべきメンタル・デトックス・コメディ!
降矢聡
Gucchi's Free School/映画配給
一見すると立食パーティーのようなお葬式には、絡みづらい親戚ばかりだ。そんな集まりは食べまくってやり過ごすと相場は決まっているけれど、『シヴァ・ベイビー』はそれすら巧みに封じている。これまでの青春映画が描いてきた、パーティーを抜け出した先の親密な空間もここにはない。逃げ場のない空間で、気まずさを悪気なく作りまくる父親役フレッド・メラメッドが最低で最高に良い。
水上文
文筆家
何者かになりたい。だけど何をしたらいいのかわからない。
周囲が着々と成功するなか自分だけが期待に応えられずにいるのではないかーー
『シヴァ・ベイビー』はそんな恐れを、親戚と元カノとパパ活相手が集うという悪夢のような状況で描き出す。
バイセクシュアル女性を主人公とした本作は、クィア映画の新時代を告げるほろ苦い青春映画なのだ。
ユリ・アボ
元違和感/プロデューサー
自分がないまま何者かになろうとする焦燥と、小さな嘘で自らを追い込む主人公の痛々しいこと。だが彼女を追い詰めるのは、お節介な両親や親戚の過剰な期待、揺らぐセクシュアリティを「実験」と呼び矯正しようとする空気でもある。狭い世界で人生が詰む瞬間が連なり、こちらまで逃げ出したくなる。それでも、シヴァを終えた彼女の少し吹っ切れた表情を、ぜひ見届けてほしい。