• AMI PARIS GRAND PRIZE 64e SEMAINE DE LA CRITIQUE CANNES 2025 第78回カンヌ国際映画祭〈批評家週間〉グランプリ受賞
  • 第98回アカデミー賞®国際長編映画賞 タイ代表作品

Story

吸い込まれても、やがて埃(彼ら)は舞い戻る。

粉じん公害が深刻化するタイ・バンコク。最愛の妻・ナットを呼吸器疾患で亡くしたマーチは悲嘆に暮れる日々を送っていた。ある日、ナットの魂は掃除機に宿るかたちで舞い戻り、ふたたび愛を確かめ合う二人。しかし一方、マーチの家族が経営する工場では、死亡した従業員の霊が機械に取り憑き、操業停止に追い込まれていた。霊に悩まされる家族から拒絶されたナットは、工場の除霊に協力することで、夫への真実の愛そして自らの存在を“役に立つ幽霊”だと証明しようとするが……。

Introduction

カンヌ国際映画祭〈批評家週間〉グランプリ受賞!タイ映画界の新たな才能が描く、愛と抵抗をめぐる現代のクィアな寓話

「(この映画とグランプリ受賞を)役に立つ幽霊もそうでない幽霊も含めて、
タイのすべての幽霊に捧げたい」
ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督

2002年、『ブリスフリー・ユアーズ』でカンヌに登場したアピチャッポン・ウィーラセタクンは〈ある視点〉部門で最優秀作品賞を受賞したが、その大胆な内容ゆえに本国では検閲にも直面した。その後もタイ映画界は多くの困難に直面し続けたが、数々の映画作家たちの存在によって進化を続けてきた。そして2025年、カンヌ国際映画祭〈批評家週間〉にてワールドプレミアを迎えた本作『ユースフル・ゴースト』は、1987年生まれの新鋭ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク監督の長編デビュー作にして、同部門においてタイ映画としては初選出ながら見事グランプリを受賞。米アカデミー賞国際長編映画賞にタイ代表として選出され、タイ映画の世界的評価をさらなる高みに押し上げた傑作がついに日本公開を迎える。

2013年、“メー・ナーク”の怪談をリメイクし、タイでメガヒットを記録した『愛しのゴースト』でメー・ナーク役を演じて一躍スターダムにのしあがったダビカ・ホーン。1,800万人超のInstagramフォロワーを抱え、"絶世の美女"の異名を持ち、いまやタイだけではなく国際的に活躍するファッションアイコンとして絶大な人気を誇る彼女だが、今作では「掃除機に宿る幽霊」というさらなる難役を、その圧倒的な存在感と繊細な表現力で見事に演じきった。共演には、ウィットサルート・ヒンマラート(ドラマ「運命のふたり」)、アパシリ・ニティポン(『デュー あの時の君とボク』『ハッピー・オールド・イヤー』)ら実力派が名を連ね、現実と夢のあわいを漂う物語に揺るぎないリアリズムをもたらしている。

タイでは誰もが知る怪談「メー・ナーク・プラカノーン」(死後も現世にとどまり、夫と禁断の愛を深めていった女性“メー・ナーク”にまつわる物語)に着想を得たという本作は、亡き妻が掃除機に宿って夫の元へ戻ってくるという奇想天外な設定を起点にしながら、記憶と忘却、個人と社会、愛と有用性といったテーマへと静かに深度を増していく。幽霊が日常に存在する世界で、人間社会の価値基準や倫理がいかに恣意的なものであるかを浮かび上がらせると同時に、「記憶すること」がひとつの抵抗ともなり得ることを示唆する。コメディ、ロマンス、ホラー、SF……様々なジャンルを軽やかに横断しながら、環境問題や労働、政治的抑圧といった現代社会の歪みに鋭く切り込むその手腕は、アジアのみならず欧米の映画祭・批評家からも強い支持を獲得した。ジュリア・デュクルノー『TITANE/チタン』の衝撃、ウェス・アンダーソンの鮮やかで緻密な映像美、アピチャッポンの持つマジックリアリズムを引き合いに語られ、「まるでヨルゴス・ランティモスがタイに移住したかのようだ」(Screen Daily)とも評された唯一無二の味わいをその目で確かめてみてほしい。すべてが結びつくラストには、驚きとともに深い感動が待ち受けている。

Cast / Staff

  • ダビカ・ホーン

    ダビカ・ホーン Davika Hoorne

    ナット役 Nat

    1992年、バンコク生まれ。タイとベルギーの血を引く女優・モデル。2010年に俳優デビュー。2013年の大ヒット映画『愛しのゴースト』でメー・ナーク役を演じ、一躍トップスターに。興行収入10億バーツを超える記録的ヒットとなり、タイ映画史上屈指の成功作となった。その後も『フリーランス』(2015)、『6ixtynin9 シックスティナイン』(2023)、ドラマ「The Empress of Ayodhaya」(2024)などに出演。2025年には、カンヌ批評家週間でグランプリを受賞した本作で主演を務め、さらに国際的評価を高めた。2023年10月、タイ人として初めてGucciおよびGucci Beautyのブランドアンバサダーに就任。2024年からはグローバル・ブランドアンバサダーを務める。また、ユニセフやWildAidの活動にも参加。Instagramフォロワーは約1,820万人で、タイ国内でもトップの知名度を誇る。

  • ウィットサルート・ヒンマラート

    ウィットサルート・ヒンマラート Witsarut Himmarat

    マーチ役 March

    1993年、タイ・ノーンカーイ県生まれ。スリナカリンウィロート大学芸術学部で演技・演出を学び、2012年にChannel 3で俳優デビュー。舞台・テレビドラマを中心に活躍している。大ヒット時代劇ドラマ「運命のふたり」(2018)でアジア全域で人気を獲得し、2023年には続編にも出演。ドラマ「My Husband in Law」(2020)、「Fah Fak Ruk」(2020)など立て続けに出演する。 2025年、本作で長編映画デビューを果たし、国際的注目を集める。近年の主な出演作に、Netflix「ティーヤイ: ボーン・トゥ・ビー・バッド」(2025)、「The Next Prince」(2025)、『Our House』(2025)がある。

  • アパシリ・ニティポン

    アパシリ・ニティポン Apasiri Nitibhon

    スマーン役 Suman

    1971年、タイ・バンコク生まれ。 1996年、テレビドラマ「Sunset at Chaophraya」で主人公アンスマリンを演じ、一躍注目を集める。その後も『The Bullet Wives』(2005)、『The Victim』(2006)などの映画に出演し、タイ映画・テレビドラマ界を代表する俳優の一人として活躍している。 幼少期にはタイの伝統芸能リケーを学び、『The Victim』ではリケーを披露するミスコンテスト優勝者役を演じるため、タイ古典舞踊の再訓練を受けた。 兄は歌手・俳優のアマリン・ニティポン、姪は歌手・俳優のアチラヤ・ニティポン。近年の主な出演作として、『デュー あの時の君とボク』(2019)、『ハッピー・オールド・イヤー』(2019)、ドラマ「My Golden Blood」(2025)、「Money, My Love」(2026)などがある。

  • ワンロップ・ルンカムチャット

    ワンロップ・ルンカムチャット Wanlop Rungkumjad

    クローン役 Krong

    1982年、タイ・バンコク生まれ。長年にわたりタイのインディペンデント映画界で活躍し、ナワポン・タムロンラタナリットをはじめとする著名な映画監督の作品に出演している。2018年、ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門最優秀作品賞を受賞した『マンタレイ』に出演。 2024年には、台湾・シンガポール・フランスの合作映画『白衣蒼狗(モングレル)』の主演に抜擢。同年のカンヌ国際映画祭監督週間でワールドプレミア後、第61回金馬奨 最優秀主演男優賞にノミネート。同賞にノミネートされた初のタイ国籍俳優となる。さらに2025年には第27回台北映画祭(台北電影節)最優秀主演男優賞を受賞し、同賞史上初の外国人受賞者となった。

  • ウィサルット・ホームフアン

    ウィサルット・ホームフアン Wisarut Homhuan

    アカデミック・レディボーイ役 Academic Ladyboy

    1991年、タイ生まれ。チュラーロンコーン大学言語文化学部卒業。映画、CM、テレビCM、テレビドラマ、舞台、TikTokなどのオンラインプラットフォームまで、国内外の幅広いメディアで活躍。多彩な役柄を演じ分ける俳優として知られている。クリエイティブなパロディ動画でも人気を集める。主な出演作として、ドラマ「DARE TO LOVE」(2022)、「Kik Son Abb」(2023)、「Thao Kradangnga」(2025)などがある。

ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク

Director

ラッチャプーム・ブンバンチャーチョーク Ratchapoom Boonbunchachoke

1987年、タイ・バンコク出身。潮州・海南系の出自を持つ。チュラーロンコーン大学映画学科卒業。現在はスタジオでフルタイムの脚本家として働き、商業映画やテレビシリーズの脚本を手掛けている。脚本執筆の他に、大学で映画理論や脚本術を教え、映画批評家としても活動している。第30回 釜山国際映画祭アジアン短編コンペティションおよび第15回グラスゴー短編映画祭で審査員も務めた。2020年、ベルリナーレ・タレントプログラムに選ばれ参加。短編映画『赤いアニンシー; あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く』は2020年ロカルノ国際映画祭に選出され、短編映画部門の国際コンペティションでヤング審査員賞を受賞。近年はタイの植民地史とポストコロニアルの状況をテーマに、さまざまな長さの映画シリーズを作るプロジェクトに取り組んでいる。

Filmography

  • 2026 The Bovine Comedy (Short)
  • 2025 ユースフル・ゴーストA Useful Ghost
  • 2020 赤いアニンシー; あるいはいまだに揺れるベルリンの壁をつま先で歩く (Short)Red Aninsri; Or, Tiptoeing on the Still Trembling Berlin Wall

Theater

地域 劇場名 電話番号 公開日
東京 新宿武蔵野館 03-3354-5670 7月10日(金)
東京 ヒューマントラストシネマ有楽町 03-6259-8608 7月10日(金)
東京 ユーロスペース 03-3461-0211 7月10日(金)
東京 アップリンク吉祥寺 0422-66-5042 7月10日(金)
北海道 札幌シアターキノ 011-231-9355 7月25日(土)
岩手 盛岡ルミエール 019-653-2420 8月28日(金)
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 7月10日(金)
山形 フォーラム山形 023-632-3220 7月24日(金)
福島 フォーラム福島 024-533-1717 7月31日(金)
栃木 小山シネマロブレ 050-3196-9000 7月10日(金)
栃木 宇都宮ヒカリ座 028-633-4445 9月4日(金)
群馬 シネマテークたかさき 027-325-1744 7月31日(金)
埼玉 シネプレックス幸手 0570-783-733 7月10日(金)
千葉 ユナイテッド・シネマ幕張 0570-783-231 7月10日(金)
神奈川 ユナイテッド・シネマみなとみらい 0570-783-784 7月10日(金)
石川 シネモンド 076-220-5007 7月18日(土)
長野 上田映劇 0268-22-0269 8月7日(金)
長野 松本CINEMAセレクト 0263-98-4928 7/26(日)
静岡 シネ・ギャラリー 054-250-0283 8/7(金)
愛知 ユナイテッド・シネマ豊橋18 0570-783-668 7月10日(金)
愛知 センチュリーシネマ 052-264-8580 7月17日(金)
京都 アップリンク京都 075-600-7890 7月10日(金)
大阪 テアトル梅田 06-6359-1080 7月10日(金)
兵庫 シネ・リーブル神戸 078-334-2126 7月10日(金)
奈良 ユナイテッド・シネマ橿原 0570-000-206 7月10日(金)
岡山 シネマ・クレール 086-231-0019 近日公開
広島 サロンシネマ 082-962-7772 7月10日(金)
愛媛 シネマサンシャイン重信 089-990-1511 7月10日(金)
福岡 KBCシネマ 092-751-4268 8月7日(金)
宮崎 宮崎キネマ館 0985-28-1162 8月7日(金)
佐賀 シアター・シエマ 0952-27-5116 8月21日(金)
沖縄 桜坂劇場 098-860-9555 8月1日(土)
京都 Cine Grulla 0773-60-5566 7月16日(木)
山梨 CineYama 050-1794-1201 8月21日(木)

Comment

  • わたしたちが愛と呼ぶもの。その対象は人の身体なのか、それとも心なのか。この映画は、言うなれば人体愛中心主義に対する、エキセントリックな革命だ。

    荒木駿

    編集者

  • 面作りは終始美しく、しかし内容や展開は、チープだったり、下品だったり、コミカルだったり、重かったり、悲しかったり、おバカだったり、怖かったりと、とにかく気持ちを上下左右に振られて、その遠心力でフラフラにさせられながらも、その軸は画面の美しさで繋ぎ止められていて。気持ちよく日常から異世界へ連れて行ってもらったそんな映画でした。

    牛木匡憲

    画家

  • きれいはきたなく、きたないはきれいで、とっても不安なはじまりながら、それはきちんと解消され、解消されるはずもなく、全てはあるべきところに収まり、収まるわけもなく、忘れ難い印象が、この映画を忘れるなと叫ぶ。

    円城塔

    作家

  • 粉じんが舞う。これを吸い、吐く。その意味作用を梃子にして、モニュメントの撤去が、工場労働者の死が、かつての虐殺が、おどろくべき手腕で架橋される。きわめて正統的で型破り、実験的で性的で猟奇的で娯楽的。ジャンルは融解し、想像だにしない景色に誘われる。なんて魅力的で、クィアな作品なのだろう。

    小田原のどか

    彫刻家・評論家

  • どうして魂だけではなく、肉体をもって生まれてきたのだろう? 夢は体験や見聞からのみ編まれるのだろうか? 記憶は誰のもの? 掃除機に憑依して夫と再会したナットは「愛の力で私はこの世に戻れた」と言った。愛とはなんだろう? 鑑賞後にはボディ、ソウル、スピリットの境界が曖昧になり、きっと確かめてしまうだろう——家にあるあらゆる家電を。

    越智康貴

    フローリスト/作家

  • どこから話そう。『ユースフル・ゴースト』は、スクリーンに映るすべてに、怒りや悲しみ、そしてそれを超越する可笑しみを纏った、驚くべき作品だった。

    金子由里奈

    映画監督

  • このとても「奇妙な(クィアな)」初長編作は、現実と幻想、ローカルとグローバル、ジャンル映画とアートハウス、同時代性と映画史を対立するものではなく溶けあうものとして堂々と差しだした一本だ。それはわたしたちが囚われている通念や常識をかき乱し、新しい感覚へと導くだろう。

    木津毅

    映画ライター

  • 掃除機に取り憑いた幽霊の物語は思わぬところへ観客をいざなう。クィアな磁場の中で語られる幽霊譚は我々に強く訴えかけてくるのだ。忘れるな、暴力を、忘れるな、犠牲者を、と。

    近藤銀河

    美術史/ライター/アーティスト

  • 僕も、もし死んだら、愛する人の目の前に、掃除機にでもなって現れたくなるはず。でも、相手のためではなくて、きっとそれは自分のため。この世への執着と後悔を抱えた、忘れられたくない人間たちの物語でした。

    清水文太

    スタイリスト/コラムニスト/クリエイティブディレクター

  • 「権力によって殺された労働者の霊が家電になってセックスする映画」…何を言っているのかわからない!が、クソつまらなく残酷なシステムに対しての、死してなお続く愛と闘争の物語が、生者の我々に乗り移る。強権政治の前にあまりにも小さく透明な我々は、しかしそれを見ようとするものさえいれば、そこには確かに力が宿る、生き続ける。「いい霊」でいる必要は、多分ない。

    super-KIKI

    アーティスト

  • バンコクを長年悩ます粉塵公害で亡くなった妻が
    夫の元に掃除機として戻ってくる
    物語はタイにおける権力と政治的抑圧へとめぐり
    その話を聞くアカデミックなレディボーイを通し
    ジェンダー規範や経済格差といった
    タイに通底する諸問題やおおらかさの矛盾をも
    ダイナミックに繋ぎ合わせようとしている
    プロットは複雑なのにトーンはあくまでも静謐に
    ファンタジー、ラブロマンス、政治ドラマ、B級ホラー
    さまざまなジャンルを飲み込んでいく
    こんな型破りな映画 観たことがない!!!

    鈴木みのり

    作家

  • 目に見える人生
    目に見えない人生
    一緒に生きていく
    お互い影響しあっていく

    目から隠れたホコリは
    掃除すれば
    気持ちよく息ができる

    タムくん

    漫画家

  • お辞儀してるような掃除機のポスターを映画館で見て可愛らしくて興味を持った。ラッキーなことにオンライン試写で観ることができたが、ポスターからの印象を遥かに超えた物語は不思議で、ロマンがあって、哀しくて、容赦なくて。実は何回か巻き戻した。映画館でもう一度一気に観たい。巻き込まれたいし笑いたい。笑ってていいのかも確認したい。

    藤井隆

    コメディアン

  • 掃除機が病院へ面会に行くシーンで、こんなにも心を揺さぶられるとは思いませんでした。霊が身近に存在するこの世界へ、私も行ってみたい。なぜ掃除機だったのでしょうか。汚れを取り込み、周りをきれいにする存在。ぜひラストシーンまでご覧いただき、その問いをもう一度胸に抱いてみてください。

    ランディ エクストラバガンザ

    振付師